顕微授精(ICSI)
顕微授精(ICSI)
顕微授精(IVF=Intracytoplasmic sperm injection)は、
顕微鏡を見ながら極めて細いガラス針(ピペット)を使って卵子の中に1つの精子を直接注入して、卵子と精子を受精させる治療法です。
『体外受精(IVF)』が卵子と精子を一緒にすることで自然な受精を待つのに対して、
『顕微授精(ICSI)』では卵子の中に精子1個を授けて受精の成立を待ちます。
つまり、医療の手で受精に向けてもう一押ししているわけです。
理論的には、卵子1個に対して良好な運動精子が1個あれば顕微授精が可能となります。
ICSIは体外受精では、受精が難しそうな人や受精しなかった人が対象になります。
① 重度の男性不妊
精液中の精子数が極端に少ない重度乏精子症、動きが極端に悪い重度精子無力症などの人。
② 原因不明の受精障害
精子の数や動きに問題がなくても、体外受精では受精しないことがまれにあります。
その原因が、卵子にあるのか(卵子の質が悪い)、精子にある(受精能力がない)のかは断定できま
せんが、顕微授精で解決するケースも少なくありません。
顕微授精(ICSI)の流れ
顕微授精(ICSI)の流れは体外受精(IVF)とほぼ一緒になりますが、受精のさせ方が異なります。
1. 卵巣刺激
排卵誘発剤を使ってたくさんの卵胞を育てます。
卵子をとる(採卵)前に自然に排卵してしまうことがないように、エコーを使用して注意深く卵子の
成長を見守ります。
採卵の36時間前にhCGを注射して、卵子の最終的な成熟をうながします。
2. 採卵
麻酔をかけ、長い注射針を膣の壁から卵巣内の卵胞に刺し入れて、卵胞液ごと成熟した卵子を吸引します。
3. 媒精 ICSI
採精された精液を洗浄・濃縮して元気な精子を選び(媒精)、
顕微鏡で見ながら精子を1つだけ捕まえ、細いガラス管で卵子に直接注入します(ICSI)。
4. 胚培養
採卵の翌日に受精したかどうかを確認した後、さらに胚の培養を続けます。
5. ET/胚移植
4~8細胞期胚(初期胚/採卵2、3日後)もしくは胚盤胞(着床時期の胚/採卵5、6日後)まで育てた
胚の中から、最もグレードのよいものを1個(※)選び、カテーテルを使って子宮内にそっと戻して、
着床してくれることを期待します。
(※)2個以上の移植は双子妊娠のリスクがあるので当院では1個移植を推奨しております。
6. 黄体補充
移植した胚が着床しやすいように、黄体ホルモンを投与するなどし、黄体機能をアシストします。
7. 妊娠判定
胚移植から約2週間後、妊娠したかどうかを判定します。胚が着床していれば、絨毛(のちに胎盤にな
る組織)からhCGという成分が分泌されます。
おしっこの中からhCGが検出されれば、それは赤ちゃんからの「ここにいるよ」のサインなのです。
ICSI Q&A
最初からIVFではなく、ICSIを選びたいのですが?

- IVFとICSIの受精率を比べるとわずかではありますが、IVFの方が妊娠率が高くなります(約5%程度)。
これは、精子が自分の力で卵子に受精を働きかけた結果からだとも考えられます。
ですので、当院では今までの経過によってIVFかICSIか判断をさせていた
だいていおります。
ただし、採精・媒精の当日の結果によっては、ICSIからIVFへの変更をご提案
させていただく場合もあります。
ICSIって遺伝子操作みたいなことをしているの?

- IVFもICSIも精子と卵子の受精を、医療が少し手助けをして受精をしやすく
してあげる、というイメージになります。
医療の手が入る、ということで遺伝子操作などのイメージを持っている方も
中にはいらっしゃる場合もありますが、赤ちゃんの奇形発生率も自然妊娠と
全く変わりません。